日本放射線腫瘍学会第28回学術大会のご案内
日本放射線腫瘍学会第28回学術大会
群馬大学大学院腫瘍放射線学教授
群馬大学重粒子線医学研究センター長
この度、日本放射線腫瘍学会(JASTRO)第28回学術大会を平成27年11月19日(木)~ 21日(土)に群馬県前橋市の群馬県民会館ベイシア文化ホール・前橋商工会議所会館において開催させて頂くこととなりました。群馬の地でJASTROの学術大会を開催させて頂きますことは、身に余る光栄であり、腫瘍放射線学教室ならびに群馬大学関係者にとりましても大きな喜びであります。
近年の放射線治療における目覚しい進歩により、がんの集学的治療の中に放射線治療が根治療法として位置づけられてきたと実感されるようになりました。日本放射線腫瘍学会は、癌の3主要治療法の1つである放射線治療における日本の主要学会であり、学術集会の参加者も年々増加し会員総数 3,000名を超える学会に発展しています。国際的には米国放射線腫瘍学会(ASTRO)、欧州放射線腫瘍学会(ESTRO)との連携に加え、日中韓放射線腫瘍学会の3か国シンポジウムを各国の持ち回りで開催しており、更には、アジア地域全体を包括する放射線治療学会の連合、アジア放射線腫瘍学連盟(Federation in Asia of Radiation Oncology (FARO))の設立を日本放射線腫瘍学会が中心となって創設するなど、アジアの放射線治療の中心的役割を担っております。
一方、放射線治療の技術的な面をみますと、この放射線治療の進歩は、主に、IMRTやSRTから粒子線治療にいたる放射線治療機器・治療システム、患者体動追跡装置などによる線量分布や治療精度の向上など医学物理学・ハード面の進歩によるものが主体であり、放射線生物学や“臨床腫瘍学”の貢献はあまり、顕在化しておりません。しかし、昨今のiPS細胞などの再生医学、がんペプチドなどの分子標的抗腫瘍免疫学などの急速な発展をみますと、高精度放射線治療の発展の先には、放射線生物学や“臨床腫瘍学”と融合し止揚(アウフヘーベン)された放射線治療の時代を迎えるであろうと考えます。そこで、現在は高精度放射線治療の成果を放射線生物学研究や腫瘍学研究に、そしてまた臨床にFeedbackする(from bed to bench and back)ことが大切であると考えています。重粒子線治療を含む高精度放射線治療の急速な進歩・普及に伴い、腫瘍の局所制御は比較的容易に得られ、且つ、有害事象を少なく治療することができるようになりつつある中で、最終的な目標の一つである根治・治癒を目指し、手術・化学療法・免疫療法などとの集学的治療による生存率の向上に向けて、放射線生物学、放射線病理学、放射線物理学を含めた、広義の“放射線腫瘍学”の更なる発展が求められております。
そこで、第28回学術大会のメインテーマは放射線治療の物理工学的革新と生物学的革新に焦点を当て、「高精度放射線治療時代の包括的放射線腫瘍学:Comprehensive Radiation Oncology in High-Precision Radiotherapy Era」としました。そして、年々、重要性が認識され拡大するがんの放射線治療で特に重要課題として取り上げられている放射線治療に関わる医療人材の教育と育成についても議論を深めたいと考えています。また、参加者数が増加している放射線技師・医学物理士向けの企画、学術大会のグローバル化に対応して外国人向けに国際原子力機関(IAEA)やアジア放射線腫瘍学連盟(FARO)とのジョイント企画などで、アジア・オセアニア地域の参加者も含めたグローバルな国際交流の場を設けたいと思います。
放射線腫瘍医を中心として、あらゆるメディカルスタッフ、放射線生物学者、放射線物理学等の学際的な専門家がこの学問空間に一同に会して、基礎から臨床へ、臨床から基礎への相互方向の学術的トランスレーションを積極的に試みたいと思います。本大会が来たるべき放射線腫瘍学のアウフヘーベンに微力ながら寄与出来る契機となったら幸いです。